冠動脈疾患の「最後の砦」へ:人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス術(Off-Pump CABG:OPCAB)

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冠動脈疾患の「最後の砦」へ:
人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス術(Off-Pump CABG:OPCAB)

はじめに

 当院では、人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス術(Off-Pump CABG:OPCAB)を積極的に行っています。心臓を止めずに、動いている状態で手術を行うため、体への負担を最小限に抑え、早期回復を可能にします。
さらに、当院のOPCABは平均吻合数が5本を超える多枝血行再建が特徴です。多くの血管を同時にバイパスすることで、より広範囲に血液を送り込み、心臓の機能を最大限に回復させることを目指しています。

冠動脈疾患について

 冠動脈は心臓に栄養を送る大切な血管です。しかし、動脈硬化などでこの血管が細くなったり詰まったりすると、十分な血液が心臓へ届かなくなり、「狭心症」や「心筋梗塞」などの重い病気を引き起こします。

症状

  • 胸痛
  • 息切れ
  • 動悸
  • 肩や腕の痛み

人工心肺を使わない「心拍動下冠動脈バイパス術(Off-Pump CABG:OPCAB)」とは?

 病状が重症の場合には冠動脈バイパス手術が選択されます。手術は、冠状動脈の狭くなった箇所を迂回する新たな血液の通り道(バイパス)を作ります。人工心肺装置による体外循環を用いて心拍動を停止させて行う方法が従来から行われてきましたが、当院では人工心肺装置を用いず心臓が拍動した状態で行う心拍動下冠動脈バイパス術(Off-Pump CABG:OPCAB)が可能です。この方法では難易度は高くなりますが、人工心肺を使用することによるリスクを避けることが出来ます。

オフポンプCABGの特徴

  • 手術中も心臓を動かしたままバイパス手術を実施
  • 人工心肺を使用しないことで全身への負担(脳・腎臓・肺など)を軽減
  • ご高齢の方や合併症をお持ちの方にも安全性が高い
  • 回復が早く、早期の社会復帰が期待できる
  • 出血や感染症などの合併症リスクが低い

バイパスグラフト

 新たな道として用いられる材料がバイパスグラフトです。バイパスグラフトは歴史的に静脈グラフト(下肢の大伏在静脈)が用いられてきましたが、当院では長期にわたり機能する動脈グラフトが多用されます。動脈グラフトとして、内胸動脈、橈骨動脈(腕の動脈)、右胃大網動脈などが用いられ、当院では積極的に動脈グラフトを用いる方針をとっています。
また動脈グラフトに比し遠隔期の開存率の点で劣るとされる大伏在静脈グラフトですが、No-touch techniqueによる新しい採取法により従来の採取法(Skeletonized technique)で生じていた血管内皮の障害、中膜の弾性繊維の断裂、外膜の平滑筋欠損などが回避され、動脈グラフトと比肩する遠隔期開存率が期待されるようになり、当院では動脈グラフトに加え、積極的にNo-touch techniqueによる大伏在静脈グラフトも使用しています。

当院の冠動脈バイパス術が選ばれる理由
~平均吻合数5本超の「多枝血行再建」!心筋を広く守る高度治療~

 冠動脈は1本だけでなく、何本もの枝に分かれています。詰まりやすいのは1か所だけとは限りません。当院では日本冠疾患学会によって認定された特別正会員(FJCA)執刀のもと、平均で5本を超える血管にバイパスをつなぐ多枝血行再建を積極的に行っています。

  • 多くの冠動脈を一度に治療することで、心臓全体をしっかり守ることができます。
  • 残された血管の再発リスクを減らし、長期的な生存率やQOL(生活の質)の向上が期待できます。
  • さらに詳しい術前検査や術中評価に基づいて、「その方だけの最適な治療」を実践します。

ご質問・ご相談はお気軽に

詳しくは外来担当医、または当科のお問い合わせよりご相談ください。

動画1 多枝血行再建(7本バイパス)の実際(上行大動脈へのバイパスグラフト中枢吻合)

動画2 多枝血行再建(7本バイパス)の実際(SVG-D2-D3 sequentialバイパス吻合)

動画3 多枝血行再建(7本バイパス)の実際(Free RITA-OM-PL1 sequentialバイパス吻合)

動画4 多枝血行再建(7本バイパス)の実際(SVG-4PD-PL2 sequentialバイパス吻合)

動画5 多枝血行再建(7本バイパス)の実際(LITA-LADバイパス吻合)

画像1 冠動脈CTによる術後評価にて7本すべてのバイパスグラフト開存を確認

画像1 冠動脈CTによる術後評価にて7本すべてのバイパスグラフト開存を確認

動画6 従来の大伏在静脈グラフト採取法(Skeletonized technique)。血管壁を露出しながら採取後、ヘパリン加生理食塩水を高圧にて注入し血管を拡張させる。血管内皮だけでなく、中膜、外膜まで損傷を来たすことが知られている。

動画7 Skeletonized techniqueを用いた大伏在静脈グラフトの造影所見。細い標的血管に対して、大伏在静脈グラフトの太さが目立つ。流速も遅いことがわかる。

動画8 No-touch techniqueを用いた大伏在静脈グラフト。周囲組織を付着させたまま採取しているため、血管壁は直接確認できない。先行して上行大動脈に中枢吻合を行うことで、自己圧で血管の拡張を行う。無理に高圧で血管を拡張させることがないため、内皮障害や中膜の弾性繊維の損傷がない。

動画9, 10 No-touch techniqueを用いた大伏在静脈グラフトの造影所見。標的血管に対して大伏在静脈グラフトは比較的細目で流速も早いことがわかる。

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