僧帽弁疾患治療の最適解: 右小開胸アプローチと革新的な視野展開法で、複雑な弁形成も、二弁・三弁同時手術も。
はじめに
僧帽弁は心臓の大切な「扉」。その異常によって息切れやむくみ、心不全などさまざまな不調を引き起こします。
正常の僧帽弁
腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全
当院は低侵襲心臓外科手術(Minimally Invasive Cardiac Surgery, MICS)と呼ばれる「小さな創で患者さんに優しい」手術を行っていることで良く知られる施設の一つで、
右小開胸アプローチによる低侵襲僧帽弁形成術を1998年以降、長期にわたって積極的に実施しています。
僧帽弁形成術の一例
僧帽弁疾患とは?
僧帽弁は、心臓の左心房と左心室の間にある弁で、血液が逆流しないように機能しています。 僧帽弁疾患には、弁が硬くなって開きにくくなる僧帽弁狭窄症と、弁がうまく閉じなくなる僧帽弁閉鎖不全症があります。
症状
- 息切れ
- 動悸
- 疲れやすさ
- むくみ
- 咳
重症化すると、心不全や肺高血圧症を引き起こす可能性があります。
右小開胸アプローチ:低侵襲な僧帽弁手術
従来の僧帽弁手術は、胸の中央を大きく切開する胸骨正中切開で行われるのが一般的でした。 しかし、当院では、右側の肋骨の間を小さく切開する右小開胸下手術を得意としており、患者様の体への負担を大幅に軽減可能で、早期社会復帰が期待できます。
従来の胸骨正中切開との比較
| 低侵襲僧帽弁手術 (右小開胸) |
胸骨正中切開 | |
|---|---|---|
| 切開部位 | 前胸部 (約6cm) | 胸の中央 (約20cm) |
| 体への負担 | 低侵襲 | 高侵襲 |
| 回復期間 | 短い | 長い |
| 術後の痛み | 少ない | 強い |
| 美容的なメリット | 傷跡が目立ちにくい | 傷跡が目立つ |
| 胸骨への影響 | なし | あり |
複雑な僧帽弁疾患・合併弁膜症にも対応
従来の低侵襲僧帽弁形成術は右小開胸下の深い外科的視野ゆえ、長尺器具が必要となり、その取り回しの難しさから複雑病変に対する弁形成術が敬遠される傾向がありました。
当院ではいかなる複雑病変患者様においても、右小開胸アプローチによる低侵襲僧帽弁形成術を第一選択としています。
従来の「右側左房切開法」に加え、Superior septal approachという特殊な僧帽弁到達法も導入し、従来と比べ、
より広大なワーキングスペースを構築することにより、一般的に右小開胸下では困難とされていた複雑形成手技に関しても対応しています。
例えば・・・
- 自己心膜による後尖拡大術:機能性心房性僧帽弁閉鎖不全症など
- 乳頭筋吊り上げ術:左室拡大を伴う機能性僧帽弁閉鎖不全症
- Barlow病などの複雑病変: 従来難しかった複雑な形成術も実施可能
- 著明な両心房拡大を伴う心房細動患者様に対する両心房縫縮および左心耳閉鎖
患者様ひとりひとりに最も適した術式を、多職種チームでご提案いたします。
当院の右小開胸アプローチによる低侵襲僧帽弁形成術(置換術)
当院では、低侵襲心臓手術指導医資格を持つ経験豊富な心臓外科医が右小開胸アプローチによる低侵襲僧帽弁形成術(置換術)を提供しています。 僧帽弁閉鎖不全症患者様においてはほぼ全例に僧帽弁形成術が可能です(僧帽弁狭窄症患者様には弁置換をおすすめしています)。
術前の流れ
- 徹底した術前検査: 心臓の状態を詳しく評価し(心エコー、CT・MRI検査など)、手術の適応を慎重に判断します。
- チーム医療: 医師(心臓血管外科・循環器内科・麻酔科)、看護師、理学療法士など、多職種の専門家が連携しながら治療戦略を練り患者様をサポートします。
手術の流れ
- 麻酔: 全身麻酔を行います。
- 手術: 右側の肋骨の間を小さく切開し僧帽弁を形成(または置換)します。必要に応じて様々な併施手術を同時に行います。
- 術後: 集中治療室で経過を観察し、状態が安定すれば一般病棟へ移動します。
- リハビリテーション: 理学療法士の指導のもと、リハビリテーションを行います。
- 退院: 状態が安定すれば退院となります。
退院後の生活
- 内服薬: 指示された内服薬をきちんと服用してください。
- 術後のケア: 手術後の生活指導を行い、早期の社会復帰を支援します。
- 定期的な診察: 定期的な診察を受け、心臓の状態をチェックしましょう。
- 生活習慣: バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、健康的な生活を送りましょう。
ご質問・ご相談はお気軽に
詳しくは外来担当医、または当科のお問い合わせよりご相談ください。
動画1 右小開胸アプローチによる低侵襲僧帽弁形成術(弁切除、人工腱索再建、弁輪縫縮による再建)
動画2 右小開胸アプローチによる低侵襲僧帽弁および三尖弁形成術(二弁同時手術)
動画3 機能性心房性僧帽弁閉鎖不全症に対する右小開胸アプローチによる低侵襲僧帽弁形成術(自己心膜を用いた後尖拡大、弁輪縫縮による再建)
動画4 僧帽弁狭窄症に対する右小開胸アプローチによる低侵襲僧帽弁置換術
